他の共有持分者に共有持分を売却した事例(土地建物が共有)
事案の概要
Aさんは、300坪の土地(都内)を兄Bとともに共有していました。共有割合は、ABで2分の1ずつであったものの実際の管理などはBが全て行い、土地を第三者に賃貸し収益を上げていました。もともと、この共有地は、ABの父である甲が所有しており、甲がすべて管理していたため、Aさんは管理の内容についてはほとんど知りませんでした。甲さんが亡くなった後に、ABで土地を2分の1ずつ共有することになりましたが、管理などは甲さんと同居していたBさんが全て行っており、いくらの収入があるのか、経費がいくらかかっているのか知ることが出来ず、一切収益を受け取ることが出来ていませんでした。そこで、この土地についてどうすればいいか解決策を探るためご相談に来られました。
解決までの流れ
Aさんから相談を受けこれまでの権利関係や管理の状況を聞いたところ、本件では、過去の賃料を清算してもらうとともに、持分を適切な価格でBさんに買ってもらう解決策が最も良いとの結論に至りました。Aさんの代理人としてBさんの代理人に交渉を呼びかけたものの面談予定を突然キャンセルされるなどの事情があったため、共有物分割及び賃料支払いを求め、一括して訴訟を提起することになりました。
最終的には、訴訟は和解で終了し、Aさんの持分をBさんに買ってもらうことになりました。価格については、概ね裁判所が選任した鑑定に則ったものであり適切なものと言えました(なお、裁判所で行う鑑定費用については、一旦Aさんが立て替え、和解成立時にBさんと精算することになりました。)。また、未払い賃料などについても和解の中で精算することになりました。
コメント
本件は、客観的には、共有不動産の全てを実質的に管理しているBさんがAさんの持分を買い取り、共有関係を解消することが適切と思える事案でした。弁護士を交えずにAB間で話をしても価格について折り合うことはなかなか難しく、双方の納得感という意味においても、裁判所で行った鑑定を参考にするという方法はよかったと思われます。
※一部、実際の事例を加工してあります。
執筆者等
- 吉藤真一郎
- 弁護士
- 共有物分割請求、借地非訟などの不動産案件、相続案件などを多く取り扱っている。
- 幡田宏樹
- 弁護士・公認会計士
- 企業法務、同族会社(非上場会社)に関する問題、共有不動産に関する案件に取り組む。